晴れた日の。











「しーかーまーる、なにやってんだってばよー」

 

ある晴れた休日、シカマルはあんまり天気がいいので庭に長いすを出して一人で将棋をしていた。
輿が載ってきた頃、不意に誰かがシカマルの背中にのしかかってきた

 

「うっわなんだよナルトかよ! 前からまっすぐ来いよ! めんどくせえやつだな!」

 

シカマルが眉をひそめて顔を上げると、ナルトである。
彼はひどく楽しそうに笑いながら、シカマルの背中から碁盤を覗き込んだ。

 

「へっへーってばよ。……あのさ、あのさ、なにやってんの?」

 

「将棋だよ。ホレもうあっちいけよ」

 

シカマルはナルトを背中から引き剥がすと、手を振ってナルトを追い払おうとした。
しかしナルトは相変わらず笑ったまま、シカマルの反対側の長いすへ碁盤をはさんで座った。

 

「しょーぎ。それってば面白いのかよ? 一人でやっててさ」

 

「ああ。一人はいいぜ。気楽だし」

 

ナルトは碁盤の上を動き回るコマを興味深げに眺めていたが、やりたそうにシカマルを見た。

 

「お、オレもやるってばよ! それってばこないだカカシ先生に教えてもらったってばよ!」

 

「カカシ先生が? ま、じゃあやってみるか? めんどいけど」

 

「やるってばよー!」

 

シカマルは簡単にコマを配置すると、ナルトに先を譲った。するとナルトはそのコマをいくつか手に取り、変なコマだと
いいながら横長く二段に並べた。

 

「・・・・ナルト。おまえ、こないだ教えてもらったってやつの手の名前言ってみろよ」

 

シカマルはいやな予感がしていたが、勤めて冷静にナルトにたずねた。

 

「う? えーとってば、ろん。りゅーいーそー? めんたんぴんどらどら! こないだ任務で三日くらいやったからルール
は完璧だってばよ! サクラちゃんがつえーのなんのって。一番どべはサスケだったってばよ! ニシシ」

 

自信満々にナルトは言うが、シカマルはすぐに頭を抱えた。

 

「・・・・あー。なんかおかしいと思ったら・・・・。おまえそれ将棋じゃなくてマージャンだ・・・・」

 

「ああ!?よっよく見ればコマとか全然違うってばよ! なんだこれ! シカマルってばなにやってんの?」

 

「・・・しょうぎ?・・・」

 

ナルトとシカマルはしばし顔を見合わせる。
ナルトは口をぽかんと開けて碁盤とシカマルを何度も見比べて頭を抱えた。

 

「・・・・しょうぎ・・・・・」

 

「このうすらとんかちに将棋とマージャンの区別なんかつくかよ」

 

不意に現れたサスケが、後ろからナルトの頭を軽く小突いた。

 

「んな! なんだよ! サスケってば! うすらとんかちっていうなー!」

 

殴りかかってくるナルトの拳を、身軽によけながら、サスケは鼻で笑う。

 

「うすらとんかちだからうすらとんかちって言ってるんだろ」

 

「なんだ、サスケまで来てんのかよ。おめえら本当に仲がいいなあ」

 

そのまま二人でじゃれあっていると、黙って二人を見ていたシカマルが感心したような声を上げる。

 

「良くないってばよ!」

 

「良くない」

 

シカマルの言葉を聞いて、二人はムキになり、声をそろえて否定する。
それが仲が良い証拠だろうとシカマルは心の中で思うが、口には出さない。

 

「はあー。頭痛え。てか別に興味ないけどおまえら人の家の前でなにやってんの?」

 

サスケがナルトを椅子から突き落として、そこに自分が座った。
ナルトは抗議の声を上げたが、別に食って掛かることもなくおとなしく地面に座り込む。

 

「今日は久々の休みだからどっか行こうぜってナルトが言ったから・・・・飛車」

 

サスケは相変わらずのポーカーフェイスで、碁盤の上にこともなげに駒を置く。
あいてがなかなかの手を打ってきたので、シカマルは嬉しそうに声を上げた。

 

「お? 二人で遊んでんのか? 桂馬」


シカマルのさすがの応戦に、サスケの整った眉がゆがむ。

 

「むむ・・・・・。いや。サクラたちとか下忍で」

 

「へー。そりゃまあごくろうなことで」

 

団体行動は嫌いなシカマルのこと、皆で遊びに行くという話に別段興味はなかったが、自分は誘ってくれないのか
と、少しだけ心が揺れた。

 

「なに言ってんだってばよ。シカマルも行くんだってばよ」

 

シカマルのお茶請けを勝手に奪って食べていたナルトが、さも当然のことと顔を上げる。

 

「へ?」

 

一瞬のシカマルの隙をサスケは見逃さずに自分の駒を進めてにやりと笑う。

 

「サクラとイノと日向が今、飯作ってるからここで待ち合わせてんだよ。ほい、王手」

 

「アー負けちまったな・・・・」

 

シカマルが完敗だといいながら頭を掻いた。その時、キバの飼っている子犬が、嬉しそうに駆け寄ってきた。

 

「うわんわんわん!!」

 

「あー! 赤丸―! こっちこいってばよ!」

 

その後を、彼と同期の下忍たちがゆっくりと歩いてくるのが見えた。
ナルトは赤丸とじゃれて走りながら、彼らのほうへ走っていった。

 

「シカマル。たまには面倒くせーのもいいだろ?」

 

サスケが、あきれたような顔をして唇の端を少しだけあげる。

 

「ま、たまにはな。サスケに負けちまったおかげで将棋も終わっちまったし」

 

天気もいいし。シカマルは晴れ渡った空を見上げて大きなあくびをした。

 

「サスケー、シカマルー! 行くってばよ!」

 

ナルトが大手を振って二人を呼ぶ。見慣れた顔がいくつも笑顔をこちらに向けている。

 

「あー。もう面倒くせえなあ・・・・・。行くか、サスケ」

 

「ああ」

 

シカマルはナルトたちにひらひらと手を振ると、サスケの肩に腕を回して歩き始めた。

誰もが楽しそうに微笑んでいる。

シカマルは、こういうのは別に続いても良いなあとぼんやりと思った。

 

END