カカティと遊ぼう 「あんのー馬鹿四代目めー!」 カカシは落とし穴に落ちた! 深さが15mはあろうかという大穴に、カカシはさかさまに落ちていた。 穴には数々のトラップが仕掛けてあり、中には本当に命が危なくなりそうなものも組み込まれている。 しかも、穴は真っ直ぐでなく、わけの分からない横穴がたくさん開いていて、そこから飛んできた、クナイや手裏剣を 両手足、口で持ったまま、カカシはこの落とし穴を作った相手をいらいらと罵倒した。 「ィ四代目―! あんたただの落とし穴作るのに、チャクラをどんだけ練りこんでいるんですか!」 怒り心頭のカカシが、火影のいる部屋のドアを勢いよく開けた。 そこには、生まれたばかりの、自分の子を抱いて大笑いする四代目の姿があった。 「あ、カカシお帰りー。どしたの。ぼろぼろじゃん。カカシったらまだまだだねー。 落とし穴一つ抜けるのに半日もかかってるし。ださ」 四代目はぼろぼろのカカシを指差し、吹き出して笑う。 それもそのはず、カカシは任務のときでさえあまり服を汚したりしないのに、 今はところどころ破れていたり、銀色の髪にはくもの巣やら木の葉やらが絡まっている。 「あほかー! あんたがS級の術なんか落とし穴にかけてたからでしょ! 半日なんかで抜け出せたんだから奇跡でしょうが!」 カカシは勢いのままに四代目を罵倒した、途端にその場の空気が一変する。 「カカシ・・・・今、俺に向かってあほって言った? しかもあんた? 里の一番えらい人に向かって、君はよくもそんな口が聞けるね?」 四代目が子供を抱いたまま、ゆらりと立ち上がる。 その殺気さえ漂う姿に、カカシは一瞬怯えながらも、四代目を睨み付けた。 「・・・・・1,200×700の机の上に大福を山盛りに積んで、 口の周りを粉で真っ白にしている人を褒め称えよって言うんですか!」 「おーおー怖い怖い。カカシが一番偉いですよー。はい、ナルトちゃん、大福ですよー」 四代目は全く怖がっている様子も無く、ナルトに大福を食べさせようと小さな口元にもっていく。 それをカカシはすばやく奪う。 「だー! 赤ん坊に餅を食わすな!」 カカシの言葉に、四代目はきょとんとして、ナルトに話しかける。 「ええー。なんで? こんなにおいしいのにねー?」 本当に、分かってない四代目を見て、カカシは頭を抱える。 「うう・・・・・。あほだこの人・・・・。もうやだ・・・・。こんな人の直属なんてえ・・・・・」 そして、顔を両手で覆うとめそめそと愚痴をこぼし始めた。 「ナルはー。カカシと遊びたかったんでちゅー」 四代目は机の上にナルトを立たせると、彼の両手を動かして、腹話術よろしく躍らせる。 「・・・・・赤ちゃん言葉は止しなさいよ。四代目・・・・・」 カカシは明らかにへこんだまま、けれどつっこむのは忘れない。 「・・・・うっさい! ちょっと恥ずかしかっただろ!」 四代目は少し恥ずかしそうに顔を背ける。 「あー」 ナルトが急にカカシに向かって手を伸ばす。 四代目が抱いているのに、彼は煩わしそうに身をよじり、さらにカカシを呼ぶ。 「あっ? ナル! なんで! パパ嫌いなの!」 「はーい。ナルちゃんおいでー。パパのお馬鹿が移ると困っちゃうからねー。あっちいってまちょうねー」 「あー」 ナルトはカカシにぎゅうと抱きつくと、父親に向かって手を振った。 「ああっ! ナルー! カカシ返して! 俺の可愛いナルトかえしてえええ!」 四代目はパニックを起こして大騒ぎを始める。 しかしカカシはそれを無視して、次の間にいる乳母にナルトを手渡した。 「・・・・・あんたいつまで泣いてるんですか」 カカシは壁にもたれたまま、飽きれたように言った。 カカシは先ほどからだだっぴろい部屋の片隅で、背中を丸めてさめざめと泣いている四代目をちらりと見た。 「・・・・俺はね、カカシ。四代目という任を背負って、この里を正しく導いていかなければいけない。 結構疲れるんだよね。だから弟子であるカカシをけちょんけちょんにいじめあわわ。 一緒に遊んでいるときが一番癒されるのよ。 ねえ、カカシ。たまには昔みたいに鈴を取り合ったりしたいじゃない?」 白い壁を指でいじくりながら四代目がぼそりと呟く。 カカシは昔、自分がまだ小さかった頃のことを思い出す。 まだ、本当の苦しみを知らず、仲間の中で笑いながら任務をこなしていたこと、 大きくなり、この人がいたからこそ忍びである自分を肯定できた日のこと。 「・・・・。分かりましたよ。今度、休みのときに一緒に遊びましょうね! だから、まず、この熊用の罠をはずさんかーい! なんで室内に仕掛けてるんですか!」 カカシは足首をがっちりとかんでいる罠を蹴り上げる。 さっき、ナルトを隣の部屋に連れて行ったわずかの間に、四代目が仕掛けたのだ。 ご丁寧に、チャクラで罠をしっかりと覆い隠して。 「あー引っかかってる。うわ! くさっ! どんくさーい!」 四代目がカカシの顔を覗き込んで大笑いする。 「キィー!」 カカシは、真剣に雷切をお見舞いしてやろうかと頭を抱える。 「こうやって、ナルトとも遊んであげてね」 四代目は微笑んでカカシの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。 「先生・・・。こいつやっぱりあなたの子だよ・・・」 カカシは、飽きることなくいたずらを仕掛けてくるナルトを追いかけながら、空を見上げてぽつりと呟いた。 END |