カカサスカカネター01










あいつは馬鹿だと思う。

自分は結構小器用で、

ずるくて、

大人で、

嘘を吐いて上手く生きて居る、

そう思ってる処がどうにも馬鹿だと思う。

 

この里では絶対の実力を誇る忍で、

一度外に出れば他国からも命を狙われるような存在で、

 

なのにどうしてか、

あいつはいちいち危なっかしい。

 

 

「サースケ」

 

 

「・・・何だよ」

 

 

呑気な声に顔を上げると、

いつも通りの呑気な人間の顔があって眉を顰めた。

 

 

「何、機嫌悪いね」

 

 

「そのしまりのない顔見てると腹が立つんでな」

 

 

いっつもいっつもへらへら笑いやがって。

 


ばれてないとでも思っているんだろうか。

それならば、

目の前で腑抜けた笑顔を振りまいているこいつは、

どんな実力を誇っていようと、

忍失格だ。

そんなことにも気がついてないのか、

この・・・

 

男は。

 

 

「酷いねー開口一番ソレ?先生何かしたー?」

 

 

「あんたを先生だと思ったことはねぇ」

 

 

「あらら」

 

 

思うかよ。

 

この、自分より十以上年上の男。

他の忍から漏れ聞く話では、

一桁の年の内に暗部に所属、

並外れた能力と才能でずっと第一線を守り、

あの四代目火影の信頼を、

誰よりも得ていた人間。

 

きっと自分では、

今はこいつの何もかもに敵わないから、

だから、

その眼の秘密も、

毎朝石碑に立ち寄り何を想っているのかも、

ずっと知らないふりをしてやってるというのに。

 


その笑顔の下に時々垣間見えるその不安定さが、

どうしようもなく腹立たしい。

 

 

「カカシ、その覆面、それ、意味ないんじゃないか」

 

 

「へ?」

 

 

「あんた見てると、腹立つんだよな」

 

 

「サスケ?」

 




見え隠れする。
お前の不安定さ。

隠したいなら、
完全に隠し通してくれ。

オレに晒そうとするな、



無防備になるな。
 



お前が何を想い、何を考え、何を吹っ切れずに生きて居るのか。

きっと今のオレでは経験が少なすぎて、

差がありすぎて、

わかってやる処か、

想像してやることすら出来ないってのに、

 

あんたが、

その顔で周りを嘯いてうまく生きているつもりで居るから、

 

 

気付かないで居てやってるのに。

 


 

「オレみたいなガキに、いちいち、晒してんじゃねぇよ」

 

 

「え、何、サスケ、何言ってるのか先生わかんないんだけど」

 

 

「お前は、どうしようもない大人だってことだ」

 

 

「ちょ、ちょっとサスケ?待ってよ、え、ちょっと〜」

 

 

 

器用に生きて居るつもりで、

大人であることに何かを諦め、

悟り、飲み込み、

その覆面の下に笑顔を作って居ても、

 

それでも、

 

オレにだけ無意識に晒される無防備な感情の片鱗に、

 

 

こいつは馬鹿でかい子供なのだと、

知る。

 

 

 

 

いつかオレが、

あんたと並ぶくらいの力を身につけたら。

 

 

 

その時には、

 

お前に肩くらい、

貸してやるから。


背中半分くらいなら、

預かってやるから、 

 



 

 

だから、

待っていろ。

 

 

 

 

 

オレは、強くなる。

 

 

 

 

 

 

 

おわり。